2025-10-30

【アート】ビヨルンに誘われて ~ アダージェット

海外から訃報が飛び込んできました.
『ベニスに死す』のビョルン・アンドレセンさん死去 70歳

このニュースにもあるとおり,ビヨルン・アンドレセンといえば映画「ベニスに死す」のタッジオ役で,超絶美少年として世界的に名を知られたのですが,同じくこの映画で有名になったのが,マーラーの交響曲第五番第四楽章,通称「アダージェット」です.
映画の冒頭,そしてここぞという場面で流れる,至高の音楽.
普通,クラシック音楽が映画の中で使われる際には,その一部分が抽出されることが多いのですが,ここでは一楽章ほぼすべてが流れます.
クラシック音楽嫌いには,まさに忍耐の十数分を強いられるわけですが,音楽がこれほど感情移入させる例を,自分は知りません.

G.Mahler : Symphony No.5
Sir Georg Solti / Chicago Symphony Orchstra
ちなみにこのジャケット画は,
19世紀末に活躍したイタリアの画家,セガンティーニの
「悪しき母たち」
インドの詩「涅槃」から着想を得たとのこと

弦楽とハープのみで奏でられる,ゆたっりとした旋律.まるで此岸と彼岸(現世と悟りの境地)との間を揺蕩うような感覚,無我の境地とはこのことを指すのでしょうか.
心の奥底に響く官能的な美しさ,そしてそこには死の兆しがあるものの,決して恐怖を感じることはなく,一種の憧憬を感じさせる.
こんなことを感じさせてくれるマーラーって何者?!

自分がこの映画を見たのは,学生時代,テレビを通じてですが,ちょうどそのとき,モーリス・ベジャール率いる二十世紀バレエ団の来日公演で,同じくこのアダージェットが演じられているのを観て,映画と同様の衝撃をダブルで喰らったのでした.
こんなショックを受けて頭のネジが緩んでしまったのでしょう,比類なき音痴で楽器など何一つ演奏できないのに,この曲のスコアを入手するという暴挙に及んだのです.
スコアを見ながら曲を聴けば(もちろん当時はカセットテープで),より一層理解が深まるのでは,という単純な動機でしたが,クラシック音楽とは無縁だった自分がこんなことをするのですから,よほどインパクトがあったのでしょうね.

曲を聴きながらじゃないと,絶対に読めません!

まあ結果は想像どおり,楽譜を見てその旋律が頭の中で鳴り響く,なんてレベルには到底到達できないことを再確認したのですが,それでもド素人なりに,楽しむことができました.

なるほど,ここでナチュラル記号(♮)を6つとシャープ記号を(♯)4つも使ってるから,曲想が一気に転換すんねや!
ここ,ホルンの人,息が続くなあと思ったら,2台のホルンが交互に吹いてるやん


こんな楽しみ方を知ったのも,ビヨルン青年のおかげでしょうか.
R.I.P. Björn

画像出典:Alfa Cinematografica
Björn Johan Andrésen
1955 - 2025


 

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