2025-08-10

【アート】神様の持ち物

今,読んでいる本 「西洋絵画のお約束」 (中野京子著,中公新書ラクレ)

中野さんの著作ではたびたび紹介されている西洋絵画における諸々のお約束ごと,これを知っていると西洋絵画に対する理解が格段に違ってくるそうです.例えば,そこに描かれている神話の神様だったり聖人にはその方々を特定できるモノ(アトリビュートと呼ぶ)が同時に描き込まれていることが多いのですが,それに気づけば,「ああ,これはあのシーンを表現しているのか」と分かるわけですね.

Peter Paul Rubens "The Judgement of Paris" - 1632-35

上の画でいうと,何の予備知識も持ってないと,少々肉付きの良いご婦人方が若者の前で何やら怪しげなふるまいをしているようにしか見えませんが,画中に,クジャク,キューピッド,盾が描かれているのに気が付くと,これらのご婦人方はヘーラー,アフロディテ,アテーナーの三美神ということになり,『パリスの審判(三美神のうち,誰が一番美しいか?)』の一場面であることが分かるという次第です.

「で,それが何の役に立つんだい?」
ごもっともでございます.これが分からなくても,何ら困ることはありませんが,蘊蓄大好きな自分には格好の獲物です.

こうして駄ブログを書くことができるし,美術館でも,
「ああ,盾と剣を持ってるってことは戦いの女神,アテーナーだね.ちなみに盾に嵌っているのはメデューサの首だよ」
なんてエエ恰好できるじゃないですか.
そんな邪心を持って鑑賞して良いのかって? イイんです!

せっかくなので,何か他にも面白そうなアトリビュート,無かったかなあ....
ありました!

聖ヴェロニカ
敬虔なキリスト教徒のヴェロニカさん,ゴルゴダの丘へ十字架を背負ってゆくイエス様を目の当たりにして,自分のヴェールでイエス様の汗をぬぐってあげたのですが,なんということでしょう,そのヴェールにイエス様のお顔がしっかりと写ってしまったのでした.
そんなわけで,イエス様のお顔がプリントされたヴェールを持った女性がいたら,99パーセント,ヴェロニカさんです.

「ふふふ,メルカリ,メルカリ♪」

Simon Vouet
"St. Veronica Holding the Holy Shroud"


あ,「よろしければお手に取ってごらんくださいませ」ってスカーフを勧めてくるのは,ごく普通の店員さんですから.

El Greco
"Saint Veronica and the veil" - 1580



聖ペテロ
ドミニコ会修道士のペテロさん,布教活動中に異端者に襲われ,胸をナイフで刺され,頭部に鉈の一撃を食らったのでした.
そんなわけで,こんな↓画があったら,これはもう間違いなくペテロさんです.

Lorenzo Lotto
"San Pietro" - 1549


いやペテロさん,そんな真面目な顔で説教されても....

これであなたも,ひとかどの西洋絵画評論家!



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