2026-06-16

【アート】小田島雄志先生ご逝去


これといった理由も無いのに,無性にシェイクスピアが読みたくなり,本棚から"ヘンリー六世(三部作)"から"リチャード三世"を引っ張り出して読み始めたところに,その翻訳者でもある小田島雄志先生の訃報が舞い込んできました.

昔は"ロメオとジュリエット"とか"ハムレット"といった有名作品しか知らなかったシェイクスピアですが,ある日,NHKの教養番組でシェイクスピアの諸作品を熱く,かつ面白おかしく解説していらっしゃった先生を拝見して,全37作の購入に至ったのです.史劇,悲劇,喜劇すべてを通して皮肉に満ちた人間観察にのめりこんでしまったのでした.

そこまで興味を持った大きな原因は,先生の翻訳にあることは間違いありません.
原語の持つ魅力を保ちながら,それを日本語独特のエスプリで包み込む,時には原典には書かれていない表現を加えてまでも言葉遊びを追求する,まさに駄洒落が大好きな先生の真骨頂でした.

「皇太子だろうが明太子だろうが(ヘンリー六世)」
「キリスト起源以来,機嫌が良い(十二夜)」

アカデミックな先生方からは非難轟々だったと聞いています.

そんなオヤジっぽい先生も,奥様へのプロポーズに際してのエピソードでは,ロマンチックな一面もお持ちでした.スミレの花にご自身の気持ちを託されたのですが,スミレといえば”ヘンリー五世”にこんな有名なセリフがあります.

「王様だってスミレの花はおれと同じように匂うだろう」

宝塚歌劇ファンでもあり,シェイクスピア研究家としての矜持も感じられる,そんな逸話です.

もう一度全作を読み通す,これが一読者にできる,せめてもの感謝の気持ちでしょうか.合掌. 

真珠と言えばかのインド
さらに貴き ロザリンド.
鳥も通わぬという辺土 
そこでも名高き ロザリンド.
絵描きも筆を二度三度
おいて嘆息 ロザリンド.
心にしみる花リンドウ
永遠に忘れじ ロザリンド.
(”お気に召すまま” 第三幕第二場 小田島雄志 訳)

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